『頭頸部がん患者の体験談集(第1集)』

口腔・咽頭がん患者会の代表の三木祥男さんより『頭頸部がん患者の体験談集(第1集)』を贈っていただいた。
患者会が出す体験談集はいくつも私の手元にある。
がんだけでなく、膠原病認知症高次脳機能障害、各種依存症など、さまざまな患者会が文集(体験談集)を作っている。
しかし、今回の頭頸部がん患者という希少がんの人たちの声を集めた文集はきわめて珍しい。
発病の経緯や治療方法、リハビリについて、病院との関わり方、家族との関係など、貴重な体験が語られている。
全国の頭頸部がん患者とその家族には、役立つ本ではないだろうか。

 

200ページを超える本文には23編の体験報告が載せられている。
短い文章の人もいれば、長文の人もいる。
編者の三木さんによると、患者会のホームページにも体験談は掲載しているそうだが、短いものより長い体験談ほどよく読まれているとのこと。
「がん患者が如何に同病者の生き様に強い関心を持っているかという事実を物語っています」とのこと。
どの体験談も、患者会で発言された内容をテープ起こししたものが原稿となっている。
だからか「注:発音不明瞭なため記録できず」と表記されて、文章が略されているところは致し方無しとしよう。
ただ、「お渡しした資料にありますように…」と前置きされて話されるケースで、その資料が掲載されていないのが残念だ。
一方、発言者の多くが大阪人であるためか、皆を笑かそうという精神が見受けられ、けっして重苦しい話ばかりではない。

 

発言日は、それぞれ文末に何年何月何日の発言か書かれている。
それを見ると、2009年から2019年までと幅がある。
「あとがき」に「医学は日進月歩ですので、発表日を手掛かりに当時の医療レベルを理解していただけたら助かります」とある。
この一文は、編者の慧眼といえる。
患者会を作り始めた頃の苦労話や、存続のあり方などについて述べられた「まえがき」とともに、この本の価値を高めている。


■『頭頸部がん患者の体験談集(第1集)』
発行日:令和2年3月20日発行
編集・発行者:口腔・咽頭がん患者会
https://cancer-of-h.jimdofree.com/